舞鶴グリーンフェスタ2019 「くろしお・はしだて 一般公開 他」
2019.5.18


今回の舞鶴グリーンフェスタでは様々な種類の艦船が公開されましたがそれらの中で最注目と言えるのがこの「くろしお」の一般公開です。


舞鶴に現れた「黒い彗星」

舞鶴地方総監部のツイッターにて「舞鶴グリーンフェスタ2019に黒い彗星が登場予定!」と熱心に事前アナウンスされており
「これは・・・潜水艦が来るな!」とワクワクしながら迎えた当日。現れたのはSS-596 「くろしお」でした。


舞鶴×潜水艦という珍しい組み合わせ

「おやしお型」の7番艦として2004年に就役した「くろしお」。現在は呉基地を母港とし第1潜水隊群・第3潜水隊に所属しています。

舞鶴に潜水艦が寄港・公開される事は珍しく、「あさしお」が一般公開された舞鶴サマーフェスタ2016などその機会は限らてれます。
なので今回の舞鶴GFにて潜水艦の寄港を企画してくれた舞鶴地方総監部他の方々には感謝です。お陰で貴重な写真が撮れました。


「くろしお」との初めての思い出・・・?

海上自衛隊ファンとして過去に何度か呉に遠征し潜水艦を見学してますが、潜水艦は任務の都合上、個体を識別する情報(艦番号など)を掲示しないので
過去に「くろしお」と接点があったがどうか分からない(見学しても気付かない)のが辛い所。だからこそ今回の「くろしお」一般公開は【特別な出会い】という訳です。


「はしだて」の艇尾から見た「くろしお」

基準排水量13500tの「ましゅう」との比較や北吸岸壁への接舷の様子など「舞鶴基地における潜水艦」を写した珍しい1枚となっております。


「くろしお」の各部をチェック @
 
「おやしお型」は1998年から配備が始まり合計11隻が建造、そして2019年現在では全艦が現役です。(1番艦「おやしお」と2番艦「みちしお」は練習潜水艦に種別変更されています)
就役から既に20年以上が経過してる「おやしお型」ですが潜水艦という特殊な艦種故に一般公開される事は少なく、今回ここまで間近で見学出来るという事は大変に貴重な機会です。

左の画像は艦首部です。高張力鋼製の船体の見た目や質感や溶接跡、、水面下の見えない船体規模を想像させる喫水線の数値、艦内へ出入りする為のハッチなど見所が満載です。
個人的に面白いと思ったのが係留索を巻き留める為の設備(フェアリーダやボラード)です。潜水艦は水中抵抗や雑音を軽減させる為に船体の突起物を極力無くしたフラットなデザイン
なのでこういう突起物(接岸設備)を見ると「やっぱり船として必要な設備は付いてるんだな」と再認識します。ちなみに航行中は船体内に収納?されるみたいです。(←質問し忘れた・・・)

右の画像は船体&艦橋です。威風堂々たる大型のセイルとその直下に位置する発令所、艦内を何層も貫通してるであろう潜望鏡など潜水艦独特の構造を予想&妄想させてくれます。
個人的に注目したいのが吸音パネルの使用比率です。「おやしお型」では吸音パネルの使用はセイルのみで船体は金属のままです。この2種類の異なる表面質感が中々乙ですな・・・


「くろしお」の各部をチェック A
 
左の画像はセイルや船体を後方から見た様子。セイル側面には人が通る為の通路や手摺がありますがその幅は極めて狭いです。ここを器用に渡る乗組員は正にスマートですね。
他に注目すべき点としては大型のセイル・プレーン(潜舵)です。現代の各国潜水艦では水中での運動性能向上などを目的に船体側(艦首)に潜舵を設置する「バウ・プレーン式」が
増えてきてますが、我が海上自衛隊は伝統的(?)にセイル・プレーン式を継続。個人的には「潜水艦と言ったらセイルから張り出した潜舵!」って感じでこのスタイルが好きですね。

右の画像はセイル頂上部です。機密保持の為に潜望鏡や各種アンテナ類は収納されています。ここを詳しく知りたい人は海上自衛隊に入隊して潜水艦乗組員になろう!(←宣伝)
他に読み取れる情報としては信号旗ですね。3枚の信号旗が掲げられており上から回答・U・Wを意味し「安全な航海を祈る」というメッセージらしい。信号旗はもっと勉強せねば・・・


「くろしお」の各部をチェック B
 
左の画像は船体後部です。横長のスリットは注排水口かな? ここから海水を出し入れしてバラストタンク内のバランスを変化させて潜航や浮上を行う・・・と思われます。

右の画像は縦舵です。X型舵の「そうりゅう型」との明確な違いであり両艦を見分けるポイントです。海面から飛び出した謎の黒い物体はさながらモノリスの様にも見える。
そしてもしかしたらスクリューが見えるかもしれない!と海面下を凝視しましたが・・・ やはり見えませんでした。


「くろしお」の甲板に乗艦
 
それではいよいよ乗艦です。潜水艦の船体は黒一色のシンプルな形状なので幕付きの舷梯がより際立って見えます。部隊マークである「海の剣闘士」の絵も格好良いね。

そして乗艦の際に艦の側面をパシャリ。・・・うん、結構汚れてるね。潜水艦は通常時でもドック入渠時でも喫水線下ってあまり見える機会が無いので中々貴重な光景かな。
しかしこれだけ汚れてると水中抵抗の増加や側面アレイソナーの効率低下などが気になってしまう所です。次のドック入りでは綺麗に清掃してリフレッシュしてほしいですね。


黒き鋼鉄のクジラの背中

おぉ・・・ これが「くろしお」の甲板か! 初めての体験に大興奮&大感激だぜ!
過去に幾多もの海自イベントに参加し様々な艦艇の甲板に乗艦してますが「おやしお型」の甲板に乗るのは今回が人生初です。乗組員さん達はこの甲板上の限られた
スペースの中で入出港作業とか整列して国旗掲揚を行っている訳ですね。制限のある環境下で最大限の能力を発揮する、潜水艦の乗組員はやはりエリート揃いです。

そして艦船ファンとして気になるのは甲板上の設備。防衛機密に接触しない限定的な公開範囲でしたが甲板各所に埋め込まれた多数のパネルなど興味深かったです。
個人的に印象に残ったのがボルト(?)を隠す赤いテープです。敵国工作員やガチ軍艦マニアならボルトの口径や形状から色んな情報を推察してしまうんでしょうね・・・


海上自衛隊の潜水艦の歴史と部隊編成
 
1945年に太平洋戦争が終結して大日本帝国海軍が解体、そして1954年に海上自衛隊が創設された訳ですが、その際に「戦後自衛隊初の潜水艦」として配備されたのが
左画像の「くろしお」です。元々はアメリカ海軍・ガトー級潜水艦の1隻である「ミンゴ」で、海上自衛隊に貸与される際に「くろしお」に改名。サブマリナーの育成に尽力しました。
その後も「くろしお」の艦名は継承され「2代目くろしお」(うずしお型5番艦)を経て今回の「3代目くろしお」となります。自衛隊初の潜水艦から引き継がれる名誉ある艦名です。

そして右画像は現在の潜水艦隊の編成・配置図です。海自の潜水艦といったらやはり呉と横須賀が2大聖地となっています。来年辺りにまた呉旅行(M.K.I)に行きたいね〜。
それにしても呉も横須賀も太平洋側にあるので、日本海側に出る場合かなりの遠回りを強いられますね。個人的には新潟県辺りに潜水艦基地があれば便利だと思いますね。


潜水艦のメカニズム
 
海中に潜航可能という特殊な艦船なので艦内の構造やメカニズムは上図の様に非常に独特かつ複雑な物となっています。そして同時にそれが潜水艦の魅力でもあります。

諸事情により原子力潜水艦(核動力)の保有に否定的な我が国では戦後の海上自衛隊黎明期より一貫して通常動力(ディーゼル・エレクトリック)潜水艦を建造してきました。
潜水艦の開発・建造に関する努力や情熱は現在まで途切れる事無く続いており最近では「そうりゅう型」の11番艦「おうりゅう」からリチウムイオン電池の搭載が始まりました。
通常動力潜水艦としては世界トップクラスの性能を誇ると言われる海上自衛隊の潜水艦。今後友好国へ輸出される可能性もありその能力や活躍に期待&応援したい所です。


潜水艦乗組員への道
 
海上自衛隊の艦艇乗組員の中でも厳しい適性検査をクリアした者のみがなれる潜水艦乗組員。その道は険しく入隊後にいくつもの課程をパスしなければなりません。

勤務体系は6時間勤務の3交代制で18時間で1サイクルとなっているので段々と1日の時間がズレていきます。更に外の景色が見える訳でもなく狭い艦内で緊張感や
対人関係を維持しながら任務に当たる潜水艦乗組員には頭が下がります。我々陸上の国民が平和に暮らせているのは彼らのお陰です。改めて敬意を表したいですね。


潜水艦乗組員の生活
 
過酷な潜水艦勤務ですが限られた環境の中で最大限の娯楽を追求すべく料理はとても美味だそうです。2017年3月の呉基地見学で「くろしお」カレーを食べたのは良い思い出です。

艦内の生活環境ですが相変わらずの3段ベッドです。そして後継の「そうりゅう型」も3段ベッドのまま(※士官寝室は2段ベッド化したらしい)です。ただでさえ潜水艦勤務は過酷なので
せめて乗組員には十分なプライベート空間を与えて欲しい所です。海自ファンとしては隊員の生活環境改善の為に「そうりゅう型の次の艦級」では2段ベッドの標準化を切に願います。


「くろしお」の広報活動
 
潜水艦は隠密行動が基本なので広報活動には消極的だと思われがちですがそんな事はありません。多国間共同演習や親善訪問で海外にも結構行ってます。
最近の「くろしお」の場合だと2018年8月〜9月にかけて南シナ海で「かが」等と共に対潜訓練を行った後にベトナムを親善訪問して交流を深めたそうです。

日本国内向けの広報活動も熱心で乗艦者にプレゼント配布も行っていました。自分も何かしらの記念グッズ(識別帽とか)が欲しかったんですがダメでした・・・


これにて「くろしお」の見学リポートは完了。現役バリバリの潜水艦である「おやしお型」の細部を見学出来た事は非常に有意義な体験となりました。
今回のイベントにより自分にとって「くろしお」は身近で特別な潜水艦となりました。
乗組員の皆様、思い出に残る素晴らしき一般公開どうもありがとうございました!




特務艇 「はしだて」 一般公開


今回の舞鶴グリーンフェスタにおいて「くろしお」に次いで個人的に注目だったのが特務艇「はしだて」の一般公開です。


気品溢れる落ち着いたデザイン
 
艦級:はしだて型特務艇(1隻のみ)基準排水量:400t全長:62m全幅:9.4m深さ:4.6m
機関:ディーゼルエンジン×2基(5500馬力)速力:20ノット乗員:29名就役:1999年11月30日艦名の由来:京都府の天橋立

海上自衛隊を訪問した国内外のVIPや外国海軍の将官等を迎賓する事を目的に建造されたのがこの「はしだて」です。その豪華な内装故に「海の迎賓館」とも呼ばれています。
過去に横須賀基地を見学した際に「はしだて」の姿を見た事はありますが、まさかこんな間近で、しかも艇内まで見学出来る日が来るとは・・・ 広報担当者の企画に大感謝です。

「はしだて」はVIPの迎賓を目的とした船なので非武装です。そして多くの来賓をもてなす為に長大な上部構造物を有し、01甲板はパーティー用のオープンデッキとなっています。
船体は白・灰色・赤の3色カラーで落ち着いていながらも力強くて鮮やかな印象を与えます。切り立った艦尾はどこかクラシカルな雰囲気で古い型の護衛艦に似てる気がします。


「海の迎賓館」へ乗艦
 
本来ならVIP向けの船なので自分みたいな一般人が乗艦する事自体がまずあり得ないのですが海上自衛隊様のご厚意に甘えていざ乗艦。

左舷後方に掛けられた舷梯から01甲板へと上がります。左画像はオープンデッキ後端の様子です。美麗なる装飾品が来賓を出迎えます。

右画像は煙突基部周辺です。「はしだて」には2本の煙突がありますが左舷側の物はダミーで艇内へアクセスする為の階段になっています。


広々とした01甲板のオープンデッキ
 
こちらは01甲板の艦橋後方に位置するスペースで立食パーティー用のオープンデッキとなっており約130人を収容可能との事。落ち着いた色合いの木製の甲板、
晴天時には開放可能な白い天幕など優雅な作りとなっています、「はしだて」は今年で就役20周年目ですがこの場所で多くの来賓をおもてなしてきたのでしょうね。

「はしだて」の主任務は迎賓ですが時として災害派遣や医療支援に従事する事もあり艇内には各種救命装備が常備されています。事故対応意識も素晴らしいですね。


艦橋と前甲板
 
クラシカルな雰囲気の外見に対して操舵装置は予想以上にハイテク化されてて驚きました。各種機器が合理的に配置されており1人でも操船可能らしいです。

前甲板には主錨や作業艇などが集中してて船らしい(?)光景となっています。船体後部の迎賓スペースを確保する為か、作業艇の搭載位置がユニークです。


02甲板のオープンデッキ
 
こちらは艦橋直上の02甲板です。艇の最上階であり360度全方位を見渡せる開放的なフロアとなっています。号鐘もうっとりする程ピカピカに磨き上げられていました。


会議室 (応接室)
 
こちらは第1甲板に位置する会議室(応接室)です。ご覧の通り匠の技が光る優雅な木製の内装となっており、「日本のおもてなし」を感じさせる造りとなっています。


これにて「はしだて」の見学リポートは終了。海上自衛隊の所属でありながら戦闘や技術研究を行う訳ではなく「国内外の来賓をもてなす事が任務」という特殊な艦船であり
これを見学する事により海上自衛隊の多様な任務の一部分を知る事が出来て大変有意義な見学となりました。「はしだて」の乗組員の皆様、どうもありがとうございました。



その他の艦船展示など


AOE-425 「ましゅう」
 
相変わらず「ましゅう」はデカ過ぎて岸壁からではフレームに収まらず上手に撮れないのが悔しい所。という訳で前日に別の場所から撮った写真も一緒に紹介。


働き盛りな「ましゅう」
 
未だに新鋭補給艦のイメージが強い「ましゅう」ですが今年で就役15周年となります。もうそんなに経つんですね〜、おめでとう! そろそろ新しい妹(3番艦)が欲しい頃合いかな?


「ましゅう」の作業艇
 
「ましゅう」本体はデカ過ぎて上手く撮れませんがこっちの小さい方はバッチリ撮れました。「ましゅう」は小回りが利かないのでこういう小型船は重宝されてそう。


AMS-4301 「ひうち」
 
「ひうち」は一般公開等には参加せず何らかの特別なミッションに従事していた模様。入隊希望者向けの特別体験航海とかかな・・・?


自走式水上標的 「バラクーダ」
 
2000年のコール襲撃事件を教訓に採用された装備で「ひうち」の搭載品という扱いです。海自も新しい時代の様々な脅威に対応しなければならず大変です。


特別機動船など
 
特別機動船(SB)も体験航海を実施。ダイレクトな揺れと水飛沫が楽しめそうな感じですね。そしてUMAも発見。一見お堅い海自のこういうノリ好きだよ。


他にも様々な企画が目白押し
 
船乗りの必須技能である結索を披露したり音楽隊+カラオケによる大合唱が行われたりと会場は大盛り上がり。ノリノリで大絶叫する隊員さんの姿が印象的でした。



その他の展示など


舞鶴グリーンフェスタは海上自衛隊が主催するイベントですが陸自、空自、その他など大勢が参加。バラエティ豊かなイベントとなりました。


退役が迫る74式戦車とその後継を担う16式機動戦闘車
 
陸自からは74式や16式が参加。自衛隊ファンとして退役が迫る74式の姿を追っていた自分としては西日本での予想外の出会いにちょっと感激してしまいました。
所属部隊を調べると74式は滋賀県・今津駐屯地の第3戦車大隊、16式は香川県・善通寺駐屯地の第15即応機動連隊・第1機動戦闘車中隊からの出向でした。


舞鶴の地に集う陸海統合戦力

海自の基地内に陸自の戦車が展開してるってのがこれまた珍しい光景ですね〜。戦闘艦と戦車が同時に楽しめる濃密で大満足な1枚が撮れました。


陸自と空自の意外な共通点・・・?
 
左画像は陸自の千僧駐屯地(兵庫県)に所属する第3後方支援連隊の73式特大型セミトレーラです。上記の74式戦車を運搬してきたと思われます。
右画像は空自の饗庭野分屯基地(滋賀県)に所属する第12高射隊のペトリオットです。陸自の輸送車輌と空自の対空ミサイル発射機は全く別物ですが
個人的に気になったのがトレーラヘッドの互換性です。陸自と空自のトレーラヘッドを交換しても問題なく牽引・走行可能かもしれないと考えると面白い。


警察・消防・海保などの展示
 

 
時間の都合でじっくり見学出来ませんでしたが、今後機会があれば警察・消防・海保などもより詳しく勉強したい所です・・・


「艦隊これくしょん」とのコラボレーション企画も
 
会場内には艦娘のパネルとかイラストが展示。スタンプを集めるとグッズとか貰えたみたいです。ただ自分は艦これには興味がないので特に参加はしませんでしたが・・・
と言うか自分が好きなのはハイスクール・フリートだからね。更に言うと本日5月18日はレオちゃん(若狭麗緒)の誕生日って事で個人的にはそっちで盛り上がってました。


Goodbye Maizuru Green Festa 2019
 
楽しい企画が盛り沢山の舞鶴グリーンフェスタ。見る物が多過ぎて十分に見学出来ない内に終了時間になってしまい16:00頃に会場を離脱です。
舞鶴基地の皆様、楽しいイベントをありがとうございました! また来年も参加予定なのでヨロシク!


舞鶴市内をブラブラと散策
  

 
海軍鎮守府&海上自衛隊の街として有名な舞鶴。長い歴史があり海軍関係の施設も多数残っている街なので海自ファンとして今後も訪問&探求を続けていきたいですね。

夕食は海自カレーを食べたいと思って提携店を何店舗か回りましたがGF出店の関係で軒並み休業中だったので最終的にココイチのフライドチキン&牛すじカレーに決定。

この後は光の湯で入浴し疲れた身体をリフレッシュ。そして21:30過ぎに舞鶴西ICから高速に乗り舞鶴を離脱、明日の目的地である神戸・大阪方面へと車を走らせます。


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