岐阜基地航空祭 2019 「装備品展示」
2019.11.10
このページでは「岐阜基地航空祭2019」にて展示された各種装備品の見学リポートをお送りします。様々な研究や試験を行う事で有名な岐阜基地(飛行開発実験団)ですが、
今年はTPC(テストパイロットコース)50周年記念という節目の年であり、より充実した展示内容となっていました。まずは北会場の装備品や展示物から紹介したいと思います。
T-4 (#66-5603) TPC50周年記念塗装機
1969年に「航空機や装備品の新規開発・研究を行うテストパイロットを育成するTPC(Test Pilot Course)」が始まり、今年で50周年記念という事で特別仕様のT-4が登場。
テストパイロットと言うと「高度な操縦技術と優れた感覚を持ち、冷静な分析・判断能力を有するエリートパイロット」の事ですね。日本では黒江保彦氏や油井亀美也氏が有名。
空での勝利を得るべく技術を追い求める者たちの夢が描かれた特別機
純国産のジェット練習機でありブルーインパルスの機体としても親しまれているT-4。派手なオレンジの塗装と尾翼の「50th Anniversary」の文字が誇らしい。
TPCの研究内容(後述)は非常に高度で一般人が理解できる部分は限られますが、航空機ファンとしてその活動を称えより明るい未来に期待したいですね。
遂に全容が明らかとなったX-2 (#51-0001)
2017年は右側面のみ、2018年は正面のみの公開だったX-2ですが、今年は遂に完全公開となり360度全方位からの見学が可能となりました。
日本が独自開発したステルス実験機の歴史と謎に迫る
X-2は1990年代に「ステルス性と高機動を研究する為の実験機」として計画され2016年4月に初飛行。合計32回の試験飛行を行った後2017年10月末に
試験終了(退役?)となりました。開発費削減の為コックピット周辺はT-4の物を、主脚はT-2の物が流用されており、全長約14mという小型機の割に機体前部
が大きく膨らんだ様に見えるのが特徴。また高機動や安定性を追求した結果なのか垂直/水平尾翼も大型であり少々アンバランスな機体という印象も受けます。
外見だけでは分からない内面的な性能を探る
コックピット後方に飛行制御用コンピュータらしき物体を搭載してる点が如何にも実験機らしい。この飛行制御用コンピュータによってエンジン出力、フラップ、
尾翼、そして推力偏向パドルなどを最適な状態でコントロールする事により通常なら墜落しかねない失速領域においても安定した飛行を行えるらしい・・・?
肝心のステルス性能についても数値的には良好らしく計算された機体形状や電波吸収材の使用によりRCS(レーダー反射断面積)はカブトムシ程度との事。
クルビットも可能(?)なX-2の推力偏向パドル
X-2のデザインで個人的に最も注目なのがこの3枚式推力偏向パドルです。戦闘機の機動性向上の技術として80年代末から各国で研究されている推力偏向機構。
ロシアのSu-37やMiG-29 OVT、アメリカのF-22等の「ノズル式」が有名ですが、X-2の様な「パドル式」となるとX-31やF-18
HARVなどその機種は限られます。
ノズル式と比べて隙間が大きいので多少のエネルギーロスがあるかと思いますが、シンプルな構造と「ビジュアル的に格好良いデザイン」が大きな利点だと思います。
そして余談ですが自分は「エースコンバット3 エレクトロスフィア」というフライトシューティングゲームが大好きです。劇中に登場する「XFA-36A
ゲイム」という架空機が
同様の推力偏向パドルを装備しており好んで搭乗していました。なのでX-2の推力偏向パドルはゲームの機体が現実化したかの様で非常に楽しい見学となりました。
こんな感じで非常に有意義な見学となったX-2の一般公開。上述の通り既にステルス性能や高機動の研究は終了してるのでX-2の行く末は・・・ 博物館で展示とか?
何はともあれ日本の国防及び航空機産業に対する多大なる貢献、ありがとうございました&ご苦労様でした!
本機によって得られたデータは将来的には純国産戦闘機の「F-3」、もしくは他国との新規共同開発に活用される見込みなのでまだ見ぬ明るい未来が楽しみですね。
F-2A (#93-8553) F-2A (#63-8502)
F-2B (#63-8102) F-2B (#03-8105)
岐阜基地に所属するF-2が大集合。全てイベント終了直前に撮った写真なので夕陽に照らされる構図となってますがそれもまた良しかな。
新装備の試験に従事するF-2B (#63-8101)
(時間が無くて十分にチェック出来なかったのですが)こちらのF-2は尾翼付け根に謎の機材を装備。位置的にドラッグシュート関係かな?
F-15J (#52-8853) F-15J (#12-8928)
F-15J (#02-8801) F-15DJ (#12-8078)
F-15J (#32-8942) 夕陽に照らされるF-15とF-4
こちらも時間が無かったのでイベント終了間際にささっと撮影。というか岐阜基地って結構な数のF-15を保有してるんですね。
F-4EJ (#77-8393) F-4EJ改 (#57-8357)
今回の航空祭における個人的な主目的であるF-4の見学と撮影。岐阜基地は改修前のEJ型を唯一保有してるのでこうして撮影・比較出来る機会はありがたい。
F-4EJ (#47-8336) F-4EJ改 (#07-8431)
南会場での見学が長引いてしまったのでF-4の撮影もイベント終了間際となってしまいましたが、夕陽に照らされる姿も中々乙な感じなので良し!
F-4EJ (#47-8327) 夕陽に佇む亡霊たち
第1格納庫では#327号機による作動展示が行われていましたがこちらも時間の都合で見学出来ず・・・ (過去に見学・撮影してるので問題は無いですが)
今回の航空祭は「退役が迫るF-4の勇姿を記録する!」と意気込んで参加した訳ですが、南会場での見学・撮影が長引き過ぎて北会場の地上展示を満足に
撮影出来なかった事(要は自分の行動計画の甘さ)が失敗でした・・・ これを教訓とし12月の百里基地航空祭ではもっと計画的に行動したい所であります。
C-1 (#78-1024) T-4 (#86-5605)
岐阜基地のC-1と言えばシルバーボディーのFTBが有名ですが今回は全く見かけず、代わりに新顔(?)である迷彩模様の#024号機が大活躍でした。
そして岐阜基地ならではの特別機である長いピトー管を装備した#605号機も。T-4は使い勝手の良い機体なので色んなバリエーションが存在しますね。
多種多様な航空機が揃う事が魅力の岐阜基地航空祭
入間基地・飛行点検隊からはU-125(#29-3041)がゲスト参加。入間基地には(退役が近いC-1も含めて)いずれ見学・撮影に行かねば・・・
陸自ヘリの展示など
明野駐屯地のコブラ(#73456)やUH-1(所属未確認)、美保基地・第41教育飛行隊のT-400(#51-5058)なども展示されていました。
ミサイルとかエンジンとか
この辺は時間が無くてまともに写真を撮ってません・・・ サーセン。と言うかXASM-3って一体いつになったら制式化されるんですかね?
TPC (Test Pilot Course) 50周年記念
今年はテストパイロットコース50周年という記念すべき年であり、それに関係して航空機に関する様々な研究や実験内容が紹介されていました。
各種研究や実験の内容など
一例として航空機が飛行する際の速度・高度・角度・空気抵抗・機体の構造や姿勢による空気の流れとそれを計測し補正する技術などを紹介。航空機は空を飛ぶ機械なので
空気流の影響を最大限に考慮するのは当然なのですが、こうして理論的・数値的に説明してもらうと航空機の技術的な難易度を実感します。そして飛行原理の理解が進むと
実際の航空機をより楽しむ事が出来ます。例えば主翼の大きさや形状から翼面荷重を計算して失速領域がどのくらいなのか予想したり。いや〜、やはり航空機は奥が深い。
ハードのみならずソフトな研究も
現代の航空機はコンピューター制御による飛行や運用が当たり前でありソフトウェア(デジタル技術)の研究も欠かせません。特に軍用機では最新の技術が求められており、
一例としてC-2での電波測定装置の試験、JDAMの誘導装置の改良、更には基地防衛用の地対空ミサイルのレーダーや射撃指揮装置の性能向上が紹介されていました。
この辺はとても難解なのでデジタル音痴の自分には理解困難なんですが、現代の戦闘ではハイテク装備によって勝敗が決まるので今後もう少し勉強しておきたい分野です。
パイロットや技術者達による飽くなき挑戦は続く
ミリタリーファンの視点で航空機を見ると航続距離や積載量等のスペックにばかり注目してしまいがちですが、本来航空機というのは非常に複雑かつ精密に計算された機械であり
その航空機を安全に飛ばす&最大限の能力を引き出す為には彼らテストパイロットや技術者の存在が欠かせません。今回の展示ではその事を改めて再認識させてもらいました。
今年はTPC50周年ですが今後も航空機の開発・研究が続く限り彼らテストパイロットが重要な存在となる事は間違いありません。「勇敢なる空の挑戦者達」に更なる栄光と活躍を!
南会場の装備品展示を紹介
先に述べたように約20年振り(?)に訪れた南会場。北会場の雰囲気を現役かつ最先端とするならば南会場は落ち着いたレトロな雰囲気といった所でしょうか。
南会場は大部分が緑豊かな植物に覆われ、厚生センターや隊舎などが多数建ち並び、退役した装備や広報館が在るなど「古き良き生活の場」って感じですね。
ペトリオット・ミサイルの発射訓練
南会場における目玉イベントと言えるのがこのペトリオットの発射訓練です。実際にランチャーを旋回させたり待機車の内部が公開されたりしてました。
触って体感する装備品など
防弾チョッキ2型や88式鉄帽の着用体験、対小銃弾用セラミックプレートの展示、(未見学でしたが)警備犬の訓練展示なども行われていました。
対小銃弾用セラミックプレートの実物を見たのは今回が初めてかも。形状が亀甲型と言うのが何となく日本らしい。(日本人は亀が好きだからね)
南会場の片隅で永久の時を刻むかつての名機たち
退役展示機の中で一際大きな存在感を放っていたのがこのC-46(#91-1141)です。お恥ずかしながらこの機の事は全然知らず今回初めて知りました。歴史について
調べると開発したのはカーチス・ライト社で1940年に初飛行。空自には1955年から供与され1977年に退役だそうです。空自の歴史を知る上で良い教材になりますね。
幾多もの改良や試験を受けてきたであろう岐阜基地の戦闘機
1960〜2000年代にかけて活躍したF-104とF-1ですが、岐阜基地の所属機なので各種試験や改造を行っていたかも知れませんね。
創設初期の空自を支えた名機たち
T-33A、T-34A、F-86F等も展示されており1954年の創設から現在に至るまでの空自航空機の歴史を振り返る事が出来ます。そして個人的に注目したいのが尾翼の表記です。
現在のADTW(飛行開発実験団)以前のAPW(実験航空団)やAPG(実験航空隊)の時代のマークが描かれており、飛行開発実験団の前身の歴史も改めて学ぶことが出来ました。
巨大なブースターが特徴のナイキJ
ペトリオットの先代の地対空ミサイルとして有名なナイキJ。名前は知っていましたが実物を見るのは今回が初めてかな? 旧ソ連の高高度爆撃機を迎撃する事を
目的として1970年代に全国の6個高射群に配備。ここ岐阜基地でも第4高射群で運用されていたそうです。後部に装着された巨大なブースターの存在感が凄い。
航空機に関する備品が無造作に並ぶ基地内
基地内を見渡すと増槽やジェットエンジンの運搬コンテナなどが無造作に置かれマニアとしてはちょっと興奮してしまう環境ですね。
旧日本陸軍時代の面影が残る基地内
岐阜基地はかつては大日本帝国陸軍の「各務原陸軍飛行場」であり、基地内には当時を物語る建物や記念碑が幾つか残っています。
左画像は大正9年に建てられた旧陸軍将校集会所で現在は広報館になってるらしい。右画像は御大ネ豊記念の碑(詳細未確認)です。
零式三座水上偵察機
こちらは昭和46年(1971年)に東京湾館山沖で引き揚げられた零式三座水上偵察機です。ボロボロの状態ですが戦争当時の航空機技術を今に伝える貴重な物です。
その他の展示など
JAFや国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のブースも。自衛隊とは組織は違えど事故救助や人道支援の志は同じ筈なのでこういう協力体制は大事ですね。