第40回 アメリカ海兵隊 岩国航空基地フレンドシップデー 展示飛行編 @
2016.5.5

それでは岩国フレンドシップデー2016の展示飛行の様子をリポートしたいと思います。今回はブルーインパルスの飛行中止により
急遽スケジュールを組み直したと思われ、「このフライトの意味は一体?」と思う部分も多少ありました。その辺も紹介していきます。


まずは「ウィスキーパパ」こと内海昌浩氏によるアクロバット飛行   10:20頃


 
大きく宙返りをして大空に弧を描いたり低空で背面飛行を行ったりと軽快な動きでオープニングを盛り上げていました。
お恥ずかしながら自分は民間の曲芸飛行チームには疎く、今回初めて存在を知りました。今後の活躍に期待ですね。


こんな感じで今回のフレンドシップデーの展示飛行はウィスキーパパからスタートした訳ですが、個人的な感想としては
いきなりフライトが始まったという感じでした。ただしこれはウィスキーパパ氏のスタートが悪いという意味ではなく、
そもそも飛行スケジュールが不明で何時頃に何が飛ぶか分からないというのが問題でした。
少なくとも自分が入手したパンフレットや会場の案内図には詳細なスケジュールは記載されておらず、場内アナウンスも不十分でした。
理由としてはブルーインパルスの飛行中止と海上自衛隊の不参加により急遽フライトスケジュールを組み直した事が原因だと思います。
在日米軍側もスケジュールの再調整に尽力した事は十分に理解できますが、スケジュールの詳細が不明なまま次々とイベントが進行。
「トイレに行きたいけどその間にハリアーが飛んだらどうしよう・・・」的な感じの状況が終始続きました。戦場にトラブルは付き物ですね。


日米の国旗を掲げてのパラシュート降下   10:30頃


 
日米両国の国旗を掲げながらのパラシュート降下は戦後の日米同盟を象徴する光景でしょうか。今後も良好な日米関係が続いてほしいですね。


滑走路端で離陸準備中のハリアー(165429号機)   10:40頃

いよいよハリアーが離陸します。ファンとして非常にワクワクする瞬間です。STOL(短距離離陸)で
離陸したみたいですが、自分の位置からでは前の観客の頭で遮られハッキリ見えませんでした・・・


左:会場上空を派手にフライパス   10:44頃                                              右:ホバリングしながら低速で会場に進入   10:46頃
 
左画像は左ロールを決めて観客に機体底面を見せながら会場をフライパスする様子です。このシーンは動画で撮影しており、動画からの切り抜きなので画質が悪いです、ゴメンナサイ。
ハリアーは亜音速機で飛行速度は遅いですが、それでも勢い良く会場を横切る様は興奮します。場内アナウンスの人もテンション高めでYeeeAhhhh!(イィィィヤァァァ!)って叫んでました。

右画像はホバリングしながら低速で会場に進入する様子です。通常のホバリング(空中停止)ではなく高度を保ったまま低速で前進する。
多分コックピット内ではパイロットが操縦桿やスロットルを巧みに操作しながら飛ばしている筈です。そう考えると考えると胸が熱くなるな!


観客の目前でホバリングしながら機体を旋回させるハリアー(165429号機)   10:47頃
 

 
これだよこれ! ハリアーの醍醐味と言ったらホバリングだぜ!
「トゥルーライズ」やYouTube等でしか見た事が無かったハリアーのホバリングを実際に見れた。正に至高の喜びであります!

ハリアーは胴体の4ヵ所の推力偏向ノズルからジェットを噴射し、重量と推力のバランスを均等にして機体を空中に停止させます。
そしてこの展示飛行では機体を旋回(ヨー挙動)させていたのでテイル・ブーム等から横方向のジェットを噴射していた筈です。
つまりパイロットは機体の高度と旋回を同時にコントロールしている筈です。ハリアーの操縦が難しいと言われる理由ですね。

肝心の写真写りは・・・まぁ、見ての通りですね。自分のカメラ(FINE PIX S1)はそんなに高性能な機種ではないですし
更にこの時間帯は逆光気味で上手く撮れなかったという事もあります。機体色が濃い目のグレーな点も災いしています。
ただホバリングしてる=実質的に「静止被写体」なので撮影モードを気にせずパシャパシャ撮影出来たのは幸運でした。


地上との距離の比較   10:48頃

こちらは「ハリアーが地上何メートル位でホバリングしてるのか?」という事を紹介する画像です。(動画からのトリミングなので画質悪いです)
観客である自分が高度計で測れる訳でもないので機体の全長(約14.5m)を元に計算すると高度約30メートル位ではないかと思います。


垂直着陸   10:48頃

約3分間ホバリングした後に垂直着陸。着地の瞬間にランディングギアのサスペンションが衝撃を吸収しつつ機体が軽くバウンドした様子が印象的でした。


垂直離陸   10:52頃

約4分間休憩した後に再び垂直離陸。ご存知の様に一般的な固定翼機は水平飛行する事により主翼から発生する揚力によって飛行しますが
ハリアーの垂直離陸の場合は揚力が得られないのでエンジンの推力のみで機体を垂直に上昇・離陸させます。
「ハリアーの性能はエンジンの性能で決まる」とか言われる由縁はこれです。今回は航空ショーという事でミサイル等を搭載してないフリーな状態
だったので素晴らしき垂直離陸を披露しましたが、通常の軍事作戦ではミサイルや増槽を装着し重量が増すので短距離離陸にて運用されます。


左:垂直離陸後に再びホバリング  10:52頃                                                   右:ホバリングしつつランディングギアを収納  10:53頃
 

そのまま飛行モードに移行し会場を離脱  10:54頃

ホバリング状態からスロットルを操作して出力を増大させ機体を上昇させつつ、推力偏向ノズルの角度を徐々に変更し
水平飛行モードに移行して会場を離脱しました。この辺の動きは「トゥルーライズ」での離陸シーンほぼそのままで感動でした。


左:その後再び会場に現れホバリングを披露した後に垂直着陸  10:55頃                          右:観客に手を振りつつ自走にて滑走路端へ移動  10:56頃
 
これにてハリアーUの展示飛行(午前)は終了。ちなみに今回の飛行は「レベルVデモ」という区分だそうです。ホバリング、垂直離着陸などVTOL機のポテンシャルを存分に披露した素晴らしい展示飛行でした!


所で今回の展示飛行で気になったのが「連続ホバリング時間」です。調べてみると冷却水の関係で約90秒が限界っていう情報が多いですが
デジカメの撮影時刻を元に実際の連続ホバリング時間を計算してみた結果、約3分間というデータが出ました。ただし注意すべき点として
3分間ホバリング後に垂直着陸→約4分間休憩(冷却水の補充無し)→再び垂直離陸し1〜2分間ホバリングといった動きを見せていたので
インターバル休憩(クールダウン)込みで5分間以上のホバリングが可能なんじゃないかと思います。
この時間が長いのか短いのか、一般人の自分には分かりませんが「トゥルーライズ」みたいにホバリングしながら戦闘する訳ではないので
離着陸という点に限れば現場としてはこれで十分なのかも。「垂直に離着陸できる」という点が最大のメリットなので時間は問題じゃなさそう。



「ヨシ・エアロバティクス」こと室屋義秀氏による曲芸飛行
左:飛行機とフェラーリによるチェイス  11:01頃                                           右:スモークを曳きながらのアクロバット飛行  11:09頃
 
レッドブル・エアレース等で有名な曲芸飛行パイロットとの事です。(ウィスキーパパと同じく今回初めて知りました) フェラーリと競争するという面白い企画を行ったり
曲芸飛行機らしい軽快な動き(垂直上昇後に空中で一時滞空、高度を維持したまま機首を下向きに方向転換し下降など)を披露して観客を楽しませていました。


「MV-22B オスプレイ」が会場上空をフライパス   11:24頃
 
何かと話題の「MV-22B オスプレイ」が会場上空をフライパス。・・・そう、この時はただ通過しただけです。実際に展示飛行を行うのはもう少し後です。


F-16(92-894号)も展示飛行を実施  11:30〜11:40頃まで

よく見るとコックピットの左側に何十個ものマークが描かれています。調べてみると「出撃回数」らしいです。

飛行中にも関わらず観客に向け手を振るなど余裕の振る舞い                                         ベイパー雲を曳きつつ軽快に飛行(綺麗に撮れてませんが)
 
ロープライスな軽量戦闘機として若干軽視されがちなF-16ですが、その軽快さを活かして飛び回りファンを楽しませていました。調べてみると三沢基地の所属機みたいです。


「ゴールデンナイツ」によるパラシュート降下   11:55頃
 
アメリカ陸軍のパラシュート部隊「ゴールデンナイツ」による展示降下です。この部隊による日本でのパラシュート降下は今回が初らしいです。大きく描かれた「ARMY」の文字がカッコイイ。


観客に手を振る姿は正にフレンドシップデーといった所

調べてみると軍の士気向上やパラシュート部隊の広報を目的とした部隊らしいです。空自のブルーインパルスみたいな感じか。


「MV-22B オスプレイ」(8006号機)の展示飛行   12:15〜12:27頃まで
 

 
現在、日本で(良くも悪くも)最も話題の航空機と言える「MV-22B オスプレイ」の展示飛行です。当然自分も飛行シーンを見たのは初めて。
凄く綺麗で安定したホバリングじゃないか!とか横幅がかなり広いしローター径もデカい!とか
同じツインローターでもチヌークとは全然違うな!など新発見ばかりで、正に「新時代の航空機」という印象でした。


旋回や前後左右への移動を披露                                                             水平飛行モードに変形
 
その場でクルクルと旋回(ヨー挙動)したり、横方向にスライドしたり、後退したりと様々な挙動を披露していました。
運動性能的には一般的なヘリコプターと同等の動きが可能で、そして機体の安定性はヘリ以上だと感じました。

そしてオスプレイの真骨頂! ホバリングモードから水平飛行モードへの姿勢転換も披露してました。
上方向を向いていたメインローターが徐々に前傾していき、完全に水平に変化する様子は技術の進歩を実感した瞬間でした。


派手に左ロールを決めつつフライパス                                                          着陸
 
ヘリモードでの運動性と安定性は上述通りですが、「じゃあ、固定翼機モードでの運動性はどうなの?」という疑問に答えるのが左の画像。
見ての通り機体を大きく左にロールさせつつ会場上空をダイナミックにフライパスしていました。固定翼機としての運動性能も十分そうです。

そして一通りのデモンストレーションを終え着陸。ちなみに垂直着陸ではなく緩やかに前進しつつ降下する短距離着陸でした。
今回の飛行はハリアーと同じく「レベルVデモ」という区分だそうです。ハリアーと同じく様々な飛行を披露していました。

世間では(主にマスコミの印象操作により)「危険な航空機」という誤解が広まっていますが、実機を見た感想としては非常に安定した飛行性能を持つ航空機だと思いました。


戦闘機もランチタイム♪   12:33頃

展示飛行に参加したF-16(894号機)とジェット燃料(JP-5)を運搬するタンクローリー。この写真ではF-16とJP-5タンクローリーが一緒に写ってるので
「F-16にJP-5を給油してる」と誤解されがちですが、調べてみるとJP-5は海軍・海兵隊(艦載機)向けの燃料との事なのでF-16は無関係です。


こんな感じで午前中のイベントは終了。自分もお昼休憩にしたかったのですが、冒頭で述べた通り今回のフレンドシップデーは詳細なスケジュールが不明で
午後のイベントが何時から始まるのか分からず、更にこの時間帯も海兵隊員が忙しそうに動いており「米海兵隊はランチも食べずに作戦続行してるのか?」
などと思いながら写真撮影してたら午後のイベントが開始。結局ランチを食べる余裕が無く、10:00頃に食べたステーキサンドが実質的な昼食となりました。


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