明野駐屯地 開設64周年 航空学校 創立67周年 航空祭 「装備品展示」
2019.11.3
このページでは「明野駐屯地 開設64周年 航空学校 創立67周年 航空祭」で展示された各種装備品を紹介します。
「明野駐屯地は陸自ヘリコプター部隊の聖地」と言われるだけあってヘリコプター関係の展示が非常に充実していました。
華麗なるラストフライトを披露したスペシャルマーキング仕様のOH-6D (#31308)
飛行中の航空機を撮る事が苦手な自分としてはこうしてじっくり撮影出来る機会は貴重です。その小さくも力強い勇姿をじっくりと記憶に焼き付けましょう。
金色のドレスを身に纏い最後の舞踏会に参加したオスカー
今回のOH-6Dの最大の特徴が機体左側面に鮮やかに描かれた金色のスペシャルマーキングです。40YEARS完、Farewell Oscar、FINAL
EGGなど
約40年間に渡って日本の空を飛び続けてきたOH-6Dに対する感謝と称賛の言葉で溢れていました。この特別塗装機を撮影出来て本当に良かった・・・
右側面はかなり控え目なマーキング
右側面は文字などは同じですが黒色で描かれたやや地味な塗装です。仮にも現役稼働中の機体なので片側だけでも控え目にしたのかな?
J型からD型へ、尾翼に見るOH-6の変遷
陸上自衛隊におけるOH-6の歴史を簡単に振り返ると尾翼がV型のOH-6Jが117機製造(1969〜1979年)、尾翼がT型のOH-6Dが193機製造(1979〜1997年)なので
陸自によるOH-6の運用機数は計310機となります。J型が飛んでる光景や時代を見た事が無いのが残念ですがこうしてD型の最後の展示に立ち会えた事は非常に光栄です。
OH-6に関わる者たちからの心温まるメッセージ
機体左側面の細かいメッセージを改めてチェック。ファイナルフライトを行った4機のオスカーのパイロットや整備員、機体へのペイントを行った隊員の名前などが書かれています。
そして見逃せないのが垂直尾翼に描かれたスプーク(F-4)へのメッセージです。日本語訳としては「元気かスプーク? 俺は先に旅立つぜ。じゃあな、我が友よ」といった感じかな。
航空自衛隊のF-4もあと1〜2年で退役予定なので同じく空を駆ける者としてのお別れメッセージですね。こういう組織の垣根を超えた友情演出には大いに感動です。GOOD
JOB!
退役するOH-6を主役とした今回の明野駐屯地航空祭。OH-6好きとしては飛行展示も地上展示も大満足の内容であり正に有終の美を飾るに相応しい素晴らしきイベントでした。
OH-6に関わるパイロット、整備員、他関係者様、今までお疲れ様でした! そしてありがとうございました!
OH-1 (#32629)
退役するOH-6の後継機として開発され1997年に制式化されたOH-1。こちらもスペシャルマーキング仕様となっており多くの観客を喜ばせてくれました。
ちょっと不安な部分もあるけれど・・・
2015年の事故により長らく飛行停止措置が続いていたOH-1ですが、問題が解決し今年から飛行を再開。今までのブランクを取り戻すべくより訓練に励んでほしい所です。
改めてOH-1のフォルムを観察する
量産型の調達数が34機と少ない上に4年間も飛行停止措置を受けていた機体なので未だに「新型機」感がありますね。特に陸自ヘリでは唯一となるダクテッド・ファンが魅力。
OH-1の全国配備状況は・・・?
こちらの機体は第5対戦車ヘリコプター隊(明野駐屯地)の所属です。そう言えば東日本在住の自分にとって富士総合火力演習以外の場所でOH-1を見るのって今回が初めてかも。
OH-1試作機 (#32601)
こちらは非常に珍しいOH-1の試作機(初号機)です。初めて見る機体に大興奮です! こういうレア機を見ると遠路はるばる明野まで来た甲斐がありますね。
白と赤の派手なカラーリング、忍者らしからぬファンキーな笑顔などが非常に目立ちます。そして機体に描かれた「TRY」の文字は「飛行実験隊」とかの略かな?
AH−1S (#73489)
こちらの機体には「翼の生えたコブラ」という中二病患者にクリティカルヒットしそうな格好良いイラストが描かれています。正に名は体を表すですね。
経験豊富な老蛇は観客を喜ばせるツボを心得ている?
M197と照準装置が定位置(正面)ではなく横を向いてる、コブラとアパッチが交差する格好良い絵が描かれてる、某エナジードリンク風の宣伝写真など細かい所で展示センスが光っていました。
AH−64D (#74511)
AH-1Sの後継機として2006年から配備が開始されるも諸々の事情により僅か13機で調達打ち切りとなってしまった悲運の戦闘ヘリであるアパッチ。
今回は全国で唯一のAH-64D運用部隊である目達原駐屯地(佐賀県)の第3対戦車ヘリコプター隊から出張してきてくれました。上述のOH-1と同じく
東日本在住の自分にとって総火演以外でアパッチを見るのは初めてかも。総火演の草地ではなく整備された飛行場で展示される光景が綺麗ですね。
配備数は少なくてもその実力は折り紙付き
1984年に初期型であるAH-64Aが米陸軍に配備され、1991年の湾岸戦争では砂塵によるトラブルに悩まされつつも多数の敵車両や施設を撃破してその高い戦闘能力を実証。
その後も改良が続けられ現在はAH-64E 「アパッチ・ガーディアン」が最新型となります。陸上自衛隊でも2006年からD型「ロングボウ」の導入が始まり現在の所有数は12機です。
改めてAH-64Dの細部を観察する
細身のAH-1Sと比較すると機体サイズ、エンジン、メインローター、パイロンなどが全て大型化してるこの力強いフォルムが魅力。今回の展示機は珍しく増槽も装備しています。
過去の辛い出来事を乗り越えて・・・
アパッチに関して嫌でも思い出してしまうのが昨年の墜落事故。2018年2月5日、目達原駐屯地の第3対戦車ヘリコプター隊に所属する1機が定期整備を終え試験飛行を行ってる最中に
突如メインローターが空中分解して住宅地に墜落。幸いにも民間人の死者は出なかったもののパイロット2名が殉職するという痛ましい事故でした。この場を借りてご冥福をお祈りします・・・
事故の原因は「ローターヘッドとメインローターブレードを固定するボルトが金属疲労で破断し空中でローターが分解して墜落」と言われています。当時のマスコミがこの事について連日報道し
「メーカーから不良品を売りつけられたんじゃないか?」とか「そもそもヘリコプターに脱出装置は無いのか?」など大騒ぎしてたのも悪い思い出です。自分はヘリコプター整備士ではないので
ヘリコプターの構造が云々とか偉そうに語れる立場ではありませんが、航空機ファンとしてあの時の事故は重大に受け止め、今後は更なる安全を追求して飛んでくれる事を願うばかりです。
まだ見ぬ未来に向けアパッチは飛び続ける
AH-1Sの後継機として期待されながらもボーイング社の都合による生産終了や価格高騰により僅か13機で調達中止になるなど何かと不運が重なるアパッチ。
後継機問題はハッキリ解決しておらず、改良型であるAH-64E アパッチ・ガーディアンを新たに導入するのか、コブラの系譜であるAH-1Zを再選定するのか、
果ては「未来の戦場では有人の攻撃ヘリはコストパフォーマンスが悪いので徐々に排除し、代わりに無人機を大量に導入して対地攻撃任務に当たらせる」等の
意見もあり攻撃ヘリコプターの未来は非常に不透明な状態となっています。とりあえず一航空機ファンである自分としては今後の状況を注視していきたいです。
UH-60JA (#43115)
陸自におけるUH-60のコールサインである「飛龍」に因んでドラゴンが描かれ、炎の中には「Aviation School Maintenance
Department The 3rd Section」と描かれています。
USH-60K (#8901)
こちらは海自の厚木基地・第51航空隊に所属するちょっと特別で珍しい「試験機ロクマル」です。こうして間近で見学するのは2018年の厚木基地以来かな。
UH-60J (#78-4584)
こちらは空自の小牧基地・救難教育隊に所属するロクマルです。展示に際して隊員さん達が愛機を細かく丁寧にメンテナンスしてる姿が印象的でした。
UH-1J (#41827)
陸自における「汎用ヘリコプターのハイローミックス運用」のローを担う機体。ローと言っても性能は十分で調達数も多いので各部隊で大活躍する名機ですね。
UH-X (#45001)
今回の明野駐屯地航空祭の装備品展示においてOH-6Dと並んで注目だったのがこのUH-Xです。今回初めて一般公開された最新の汎用ヘリコプターです。
UH-1Jの後継機
2010年頃にUH-1Jの後継機を決める「次期多用途ヘリコプター導入計画/UH-X」が持ち上がり、2012年に「川崎重工のOH-1をベースとした案」に決定しますがその後
機種選定に関わった防衛省や川崎重工の間での不正談合が発覚して計画は白紙化。改めて機種選定を行い「富士重工案」に決定したという紆余曲折の歴史がありますね。
ベースは民間のベル412
今回初めて公開されたUH-Xですが完全な新型機という訳ではありません。元々は「ベル412」という機種で、更にその412を基にSUBARUと共同開発(改良)した
「ベル 412EPX」という機種を陸自向けに小改良したのが今回のUH-Xとなります。ベルシリーズはバリエーションが非常に多くて外見や型番が
似てる上に軍用・民間用でベストセラー機なのでその違いを理解・把握するのに苦労する・・・ 逆に言えばそれだけ優秀で完成された機体と言う意味でもありますが。
常に進化を続けるUH-1シリーズ
上述の通りベルシリーズは非常にバリエーションが細かい上に外見や型番が似てるので各型を見分けるにはかなりの知識量が必要なんですが、現在陸自で運用中の
UH-1Jとの違いに限って見ればメインローターが4枚化した事とエンジンが双発化した事が外見上の大きなポイント。より重厚な外見となり「新型機」感が出てますね。
そのポテンシャルはまだ未知数
「4枚ローターのベル」という点で見れば「UH-1Y ヴェノム」に似てるし、「排気口が並列に並んだベル」という点で見れば「UH-1N ツインヒューイ」に似てる。
そしてUH-1Jと比べると外見のみならずグラスコックピット化などソフトウェア面も大きく進化してる。はぁ〜・・・ ベルシリーズは探究し甲斐がありますね〜。
今回初めて一般公開されたUH-Xですが、いずれ制式化されて「UH-2」となり部隊配備が始まる筈です。その頃になったら改めて運用状況や機体細部を見学したいですね。
そしてふと気付いたんですが我が長野県が運用している消防防災ヘリコプター「アルプス」もほぼ同型のベル412EPIなので今後改めて細部等を見比べて見ようと思います。
CH-47J (#52931)
こちらのチヌークでは機内見学を実施。所属は航空学校・教育支援飛行隊(SD)です。チヌークはやっぱり機体後部の形状がカエルっぽいですね。(笑)
TH-480B (#62355)
飛行展示の紹介でも少し述べましたが、実は個人的にTH-480Bって初めて見る機体なのでこうしてじっくり見学出来るのは嬉しいですね。
キャノピーに書かれている「タンゴ」ってのが本機のコールサイン(ニックネーム?)みたいですね。クチバシとか目の飾り付けが可愛いです。
良い意味で陸自のヘリコプターらしくない機体
アメリカのエンストロム社が開発した機体で原型の初飛行は1989年、陸上自衛隊では2013年から練習ヘリコプターとして運用中といった感じです。
あまり聞いた事が無いメーカー&機種名なので調べてみるとアジアなど数ヵ国への販売に留まるマイナーな機種らしい? 今後の活躍に期待ですね。
そして最大の特徴はこの鮮やかな蒼いボディー。「陸自ヘリ=OD色」という常識を覆し、更にスペシャルマーキング仕様なので強烈に印象に残ります。
細かい部分で個性的な設計が目立つ
テールローター基部はパイプを組み合わせたシンプルな構造です。ベル47を彷彿させるクラシカルなスタイルですが実用上はこれで問題ないんでしょうね。
個人的に気になったのがメインローター関係です。「スワッシュプレートが見当たらないんだが・・・ どうやってブレードの角度を変化させてるのコレ?」と思い
じっくり見てみるとどうやら「マストの内部をコントロールロッドが通っており機体内部にスワッシュプレートがある構造」らしい?? 今度改めて調べてみます。
陸自練習ヘリの歴史を受け継ぎしもの
陸自の練習ヘリの歴史を振り返ってみると1971年(昭和46年)に「TH-55」を導入した事に始まり、その後時代と共にOH-6J、OH-6D、TH-480Bと機種も更新してきました。
航空機ファンとしてはコブラやチヌークなどの正面装備に注目しがちですが、彼らヘリパイロットは皆こういう機体で練習を重ねてきたのだと思うと練習ヘリの見学は有意義ですね。
AW-139 (#JA119M)
こちらは「三重県防災航空隊」のAW-139です。普段は自衛隊の航空機ばかり見てる自分としてはこういう他の組織のヘリコプター見学って非常に参考になりますね。
本機は2017年に導入されたばかりとの事。ヨーロッパ製のヘリコプターらしいどこか気品に溢れたデザインであり、質実剛健な自衛隊ヘリとは違った魅力があります。
三重の平和と安全を守る者たち
黄色い派手な救助用スーツに身を包んだ防災航空隊の方々。普段は山岳や河川での救助活動、火災消火などに従事しています。こういう人達の存在は頼りになりますね。
そして同じく派手なカラーリングであるAW-139と一緒だと中々見栄えする光景に。ちなみに機体カラーの青は三重県の美しい海を、赤は燃える情熱を表しているそうです。
三重防災航空隊の勇姿と活躍に敬礼!
スケジュールに余裕が無かったのか13時過ぎには会場を飛び立っていった(あまり写真が撮れなかった)三重防災航空隊。今後も自衛隊との協力体制を深めてより活躍してほしい所です。
車両系装備品展示など
ヘリコプター以外の装備品展示も多数あったのですがページの都合で割愛。ヘリコプター基地という事で立派でゴツイ救難消防車もばっちり配備されていました。
AH-1S (#73447) 武装展示
こちらはAH-1Sの出撃時における武器・弾薬の補給や整備を紹介するという展示です。画像の様に出撃→攻撃→補給などの様子を実演します。
おぉ〜、こういう展示は珍しいね。昔セガサターンの「ガングリフォン」というゲームに熱中してて作中でこうしてこまめに補給してた事を思い出すね。
弾薬や燃料を補給
1回目の出撃・攻撃を終えたコブラはFARP(Forward Arming Refueling Point/前線に設けられた補給・整備地点)に戻り燃料や弾薬の補給を行います。過去何十回も
コブラを見てますがこうした補給作業を見学するのは初めてなので非常に勉強になりますね。(カメラの設定が不適当だったので上手く撮れない部分もありましたが・・・)
TOWミサイルの再装填
対戦車ヘリとして有名なコブラですが主兵装である「BGM-71 TOW」は実弾・模擬弾共に中々見る事が出来ないレア装備なので、こういう装填・補給の実演は
非常に参考になります。安全の為にちゃんとアース接地してる事、装填の際にはランチャーが下方に折れ曲がる事など現場のリアルを知る事が出来て面白い。
ハイドラ70ロケット弾の補充、M197の射撃
ハイドラ70(2.75インチ)ロケット弾の再装填も実演。ハチの巣の様なM261発射ポッド(19発装填)に前方からロケット弾を押し込んでいく光景がこれまた興味深い。
そして補給を終えたコブラは再出撃、敵に向けてM197で射撃します。高速回転する20mm3砲身と吐き出される薬莢&リンクに大興奮! やはりガトリングは良い・・・
展示されるコブラの牙
改めてコブラの各種武装をチェック。TOWミサイル、70mmロケット弾をここまで間近で見たのは初めてかな? 安全なレプリカとかを販売してほしいものだ。
今回初めてAH-1Sの補給シーンを見学しましたが非常に面白かったですね。隊員さん達の手際の良さ、FARPの重要性を再認識した素晴らしい展示でした。
その他の展示や日々の活動報告など
2週間前の台風19号では自衛隊の迅速かつ適切な災害派遣活動により多くの命が救われました。長野県に住む者として改めて感謝とお礼を申し上げます。
部隊配備に向け準備が進むV-22 オスプレイの紹介や近況報告
米国ニューリバー海兵隊航空基地での訓練の様子、ティルトローター機の構造やメリット、更に南西諸島における島嶼防衛の重要性や騒音測定の結果等が紹介されています。
自分はミリタリーファンとしてオスプレイの導入には賛成であり、導入反対派の人達にはこういう資料をよく読んでもらって日本の現状やオスプレイの利点を知ってほしいですね。
大日本帝国陸軍時代からの歴史を語り継ぐ場所 「明野航空記念館」
陸自ヘリコプター部隊の聖地として有名な明野駐屯地ですが、かつては大日本帝国陸軍の「明野陸軍飛行学校」でした。左画像の建物は当時の将校集会所であり、
現在は「明野航空記念館」として当時の貴重な史料が多数展示されています。一例として右画像の大きな肖像画は「加藤隼戦闘隊」として有名な加藤建夫少将です。
大日本帝国陸軍が好きな人にお薦め
残念ながら時間の都合でじっくりと見学出来なかったのですが、館内には大日本帝国陸軍に関する史料が豊富に展示されており旧陸軍好きにはオススメしたい場所です。
国に忠誠を誓い魂を捧げた若鷲たち
かつて明野陸軍飛行学校では多くの航空機搭乗員を育成、そしてこの地から巣立った若鷲たちが数多の戦場に送り出され国の為に戦い命を落としていきました。
戦後、明野陸軍飛行学校は陸上自衛隊航空学校・明野駐屯地として生まれ変わり、新しい時代の翼であるヘリコプターの操縦を教える場となり現在に至ります。
ミリタリー(航空機)ファンの一人として過去の辛く悲しい歴史を真摯に受け止め、そして戦後〜現代までの歴史や実情を学び明るい未来に繋げていきたいですね。
今回初めて参加した明野駐屯地航空祭ですが魅力的な展示が多過ぎて全てをじっくり見学出来なかった事がやや残念。来年以降に改めてチェックしたいですね。